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LIFE STYLE

カレー屋にしてカレー屋にあらず。軽井沢で地域の人をつなぐ居場所『eyecurry』&ファッションの楽しみ方を後押しする店『Nudge』

師走。暖冬と言われていた去年とはうって変わり今年の寒さは格別。軽井沢は最低気温がマイナス10℃近くになる日もでてきました。そんなキリッと寒い冬に一口頬張ればホッと幸せ気分になれるもの……と言えばカレー。2020年9月に、中軽井沢にオープンしたカレー屋『eyecurry(アイカリー)』、そして同じ店内でミリタリーブランドを中心にファッションを展開する『Nudge(ナッジ)』。オーナーご夫妻の、ご主人ジェイさん、奥様のヒトミさんにお話を伺いました。

▲オーナーご夫妻のジェイさんとヒトミさん。eyecurry & Nudgeの店舗看板は軽井沢の画家であるトニー・鈴木氏のオリジナル作品。

身体に優しい。旬の野菜をふんだんに使ったフレッシュ・カレー

中軽井沢駅から徒歩で約12分。中軽井沢エリアにある最も大きな公園、湯川ふるさと公園から東へ歩くこと数分。湯川沿いの閑静な通りに2020年9月にゆっくりひっそりオープンしました。

ヒトミさん(以下敬称略):eyecurryのカレーは、軽井沢をはじめ周辺地域で採れる旬の野菜を使ったスープがベースになっていて、お子さんでも食べやすいようあまり辛くしていないところが特長です。

▲ワンプレートにお惣菜・サラダ・デザートのフルーツが盛られ、野菜をふんだんに使ったカレー。食後のドリンク付きで1,500円

何日間も煮込んで作るカレーではなく、野菜スープとして前日から仕込んだ後、翌朝カレーに仕上げています。フレッシュな野菜スープを毎朝作っているような感覚に近いですね。軽井沢の霧下野菜と呼ばれるみずみずしい野菜をはじめ、地元の食材をたっぷり使っています。夏はとうもろこしやズッキーニ、冬は大根などの根菜類。実はこのルー、ほぼ野菜でできていて、今回、このカレーを作る寸胴鍋には大根だけでも4本くらい入ってるんです。

ー美味しくて、あまりにもさらっと頂いてしまいましたが、そんなにたくさんのお野菜が溶け込んでいたんですね!

ヒトミ:あんまりお腹に重たくないでしょう? カレー味の何か食べたな〜というくらいに、軽く仕上げています。とにかく身体に優しいカレーを目指しています!

「いつか自分たちのお店を持ちたい!」そんな夢が縁をつなぐ

―お店の中はもう何年も前からここでやっているような、洗練されたとても落ち着く空間ですね。まるで海外にいるような上質なインテリアが素敵です。東京でもお店をされていたのですか?

ヒトミ:他のお客さんにも同じことを言われたんですが、そう感じてくれて嬉しいです。実は……全然違う仕事していたんですよ(笑)。

ここへ来る前は10年ほど東京に住んでいました。子供がちょうど小学校に上がるタイミングで、軽井沢に私立の学校ができるという話をたまたまラジオで聞いて、それから説明会に参加して帰りには物件を見て。すぐにここだって決めていましたね(笑)。これまで地方や大都市含め何度も引越しをしてるので、「移住するぞ!」ではなくて、子どもの育つ環境を考えて「ちょっと大きめの引越し」くらいの感覚で軽井沢にやってきました。

夫はずっとアパレルの仕事をしてきて、いつか自分達のお店を持ちたいという夢が二人にあって。実際東京でも探していたんですが、結果的に軽井沢で良い物件に巡り逢えたんです。前オーナーさんはもともと、リタイア後に飲食店をやろうと夢を描かれていたそうですが急遽叶わなくなってしまい。こうやって形にできたのも、ご縁とたくさんの方達に助けていただいたおかげです。夢を継ぐって言うと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、歳を重ねるごとに「ご縁」という言葉を感じています。

ーまさに出会うべくして出会った物件だったのですね。全然違う仕事というと、これまでヒトミさんはどんなお仕事をされてきたのですか?

ヒトミ:主人はアパレルで今も継続してますけど、私も直近で言えばここ12年間くらい、外資の大手アパレルメーカーで、企業のブランド哲学を教える仕事をしてきました。人事とか人材育成とかの分野で。ただ、アパレルといっても衣・食・住、ライフスタイル全てを扱うブランドだったので、着ること、食べること、暮らすこと、全てが含まれていて。ライフスタイルの一つである「食」ーそこを私自身でやりたいなと思って。小さな箱だけれど、一つのブランドを作るという意味では、今このお店でやっていることと繋がっています。ずっとブランド哲学をやってきてるのでそこのノウハウは持ってるかなと。

ジェイ:私は、妻の作るカレーが美味しいから、飲食店をやるならカレー屋だなと思っていました。軽井沢で食べる高級なフレンチもいいけど、やっぱり家庭料理の美味しさってあると思うんですよね。

ヒトミ:今まで家庭料理としてカレーを作ってきましたが、こちらでお店をやるにあたって、それとは違うカレーにしようと、昨年の12月に移住してからずっとカレーを作って研究していたんです。カレーってお家でも作れちゃうから、ハードルが低いようで高い。ここじゃなきゃ食べられないカレーを作りたいなって。

ー自宅でカレーは作りますけど、確かに、ここまでお野菜使って手間暇かけたカレーは自分では作らないですね(笑)

まるで“サードプレイス”のような「カレー屋だけど、カレー屋じゃない何か」

ジェイカレー屋って言うのはあくまで入口なんです。カレーを嫌いっていう人はほとんどいないでしょう。そして入り口は広いほうがいい。

軽井沢で、小さな子どもでも入れて落ち着いて食事ができる場所って結構限られていて。ここでは、お子さんが多い時はテーブルを退けて、空間を広げてキッズスペースにしてるんです。

せっかく軽井沢に来たんだから、これだけ自然があって、子どもは伸び伸び遊んで親はゆっくり過ごせるような。そういう所があったら良いなと思ったんです。

ーブランディングの話が出ましたが、ずばり、ここが大事にしてるブランド、コアになるキーワードって何でしょうか?

ジェイ:ここは、カレー屋だけど、カレー屋じゃない。ってことかな。「カレー屋の顔をしたカレー屋じゃない何か」(笑)

ヒトミ:最近よく聞く言葉でいうと、「サードプレイス」っていうんでしょうかね。でもね、「サードプレイス」の本当の意味を考えてるんです。オープンから3ヶ月経って、主にご近所にお住まいの別荘の方、定住者の方半々くらいがいらしています。まずはこの周辺の方たちに響いていけばいいなと思っていますが、ここをよく利用してくれるお客さんから、最近「サードプレイス」って言葉がでてきたんです。ああ、間違ってなかったかなって。

ジェイ:カレー屋さんのイメージって、ご飯食べたらさっと帰る場所だったりしませんか。でも、うちはそうじゃなくて、どちらかといえば接客するし、なんなら一緒に楽しむし、こうやってお客さんと一緒に寛ぐこともある。2時間は居たりします(笑)。

ーカレー屋さんに2時間ですか!?

ヒトミ:ご覧の通り、あんまり席数がないので、うまいことお客さんがうまく被らず、また被ってもお客さん同士が話したりしていて。そういうお客さん同士のつながりも生まれてきています。お客さんが電話くれるんですよ「今日やってる?」とか、混雑状況とか。 来てくれるお客さんが良い場所にしてくれていて、願ったり叶ったりです。そういう地元の方たちから、私たちもいっぱい教えてもらってます!

▲暖かな日中は、湯川のせせらぎを聞きながら外のテラス席を利用することも可能。

ジェイ:例えば東京でこうやってカレー屋で出会っても、気軽にこんな風に喋ったりしないですよね。でも、軽井沢という場で出会うと、こうして色々話してくれたりする。

ヒトミ:お客さんから話しかけてくれたりするのが私たちも嬉しくて。ここでつながることがあるし、私たちがつなげることもあるんです。

コロナでセルフビルドが意外な方向に

ヒトミ:こちらへ引っ越してきたのが2019年の12月。ほんとは2020年のゴールデンウィーク前に開けるつもりだったけれどコロナでできなくて、外出自粛の中のんびり家族でD I Yしながら開店の準備をしていったんです。

実はここの内装関係全部自分たちで作ったんですよ。実は私は建築の学校も出ていて、こういうのもやってきたので、壁も全部自分たちで塗ったり、階段も作ったりして。今、振り返ってみれば色々な面で良かったなと思ってます。作った場所への愛着が湧くし、子どもたちにも作ってる親の背中を見せることができる。作っている間、近所の方も気にして見てくれてたから、オープンした時には「やっとできたね!」って声かけてもらって。

▲eyecurry側にはセルフビルドした棚に、人気の「マリールゥ」のパンケーキミックスなど雑貨やアパレルが並ぶ。

そしたら今度は、お家買った方からリフォームの相談や、インテリアの相談が来るようになったんです。セルフビルドをちょっとやってみたい、自分なりにこだわりたいって人。作り方・やり方を教えたり、時には建築屋さんとつなげたり。カレー屋とファッションだけじゃなくて、いろんなことをやってるんですよ。

ジェイ:ルイーダの酒場(*注1)って知ってますか? ドラクエやってた人ならわかるかな。

*注1:ルイーダの酒場とは、スクエアエニックスの「ドラゴンクエスト」シリーズに登場するバー型の酒場で、自分が望んだ名前と性別、職業を持つメンバーを探してくれる出会いと別れの場。

ー必要としている人に出会える場、つなげる場ですね。

ヒトミ:この3ヶ月弱で、いろんな人の交差点になってるなって感じています。今までの人生、東京での暮らしと違って、なんだか軽井沢に来てからの時間って濃いなあと感じていて。今までの10年とちょっと違う。毎日の充実感、満足感がすごいんです。ここへ来た時に、「軽井沢で商売することって特別なことなんだよ」って地元の方から言われたんですけど、ほんとそうだなって。今まで、こんな短い間に、これだけの濃い出逢いって経験したことがない。だから、何かやりたい人、どうしたらいいかなって困ってる人がいたら、助けたいなと思っています。私たちもたくさん助けてもらってきたから。

ファッションの楽しみ方を後押しする「Nudge」

ーナッジ(*注2)の由来は小突くという行動経済学の用語からきているそうですね。

(*注2)ナッジ:行動科学の知見から、望ましい行動をとれるよう人を後押しするアプローチのこと。英語でナッジ(nudge)は「ひじで小突く」「そっと押して動かす」の意味。行動変容をそっと促すナッジは、しばしば母ゾウが子ゾウを鼻でやさしく押し動かすようすに例えられる。

ジェイ:そうです。誰かの背中をそっと押すような、母ゾウが小ゾウを促す動きをブランドロゴで表現しています。元々、ブランドのマーチャンダイザーをやってきました。お店によってやり方は全然違うんですけど、今シーズンどんなの作りましょうかとお店と一緒に考えていく仕事です。

▲今人気なのはこのタンゴシリーズ。紐を引っ張るだけで開け閉めができるシンプルな作り。小銭入れの他、同じデザインのショルダーバッグがある。

eyecurry & Nudge のこれから

ヒトミ: これまでもずっとやってきましたが、ブランディングってとても大事だと思います。お店ももちろんだけど、軽井沢という町自体もそう。いろんな規則やルール、目には見えないたくさんの方達の努力があって、今のこのブランドができあがっているんだと思うんです。

ブランドを守るという意味で、私たちにとっては軽井沢はしっくりきています。軽井沢の古い歴史、みんながイメージしている軽井沢の形、それはもちろん大事。その一方で、移住者・若者が増え人も時代も変わってきています。古きよき時代への憧れもあるし、新しい若い世代がつくっていく価値観もとても好きです。

私たちは、昔からあるものと、新しく生まれたもの、そのどちらかではなく、うまくその「間」を行く風のようでありたいなと思っています。新旧が繋がり、交わり、会話ができ、助けあったりできる新しい場が創れたらいいなと。だからカレー屋にしてカレー屋にあらず。色んな意味のある場所なんです。これからNudgeでは不定期でBarの営業も行っていく予定ですので、ぜひお楽しみに。

ーリアル「ルイーダの酒場」になりそうですね!

新たな軽井沢の風『eyecurry』&『Nudge』。軽井沢の伝統やブランドを大事にしながら、古いものと新しいものの間を通り抜け、そしてつなぎながら、町の中に新しい風を吹き込んでいくことでしょう。ぜひ、お気軽にお問い合わせの上お立ち寄りください。

eyecurry & Nudge(アイカリー&ナッジ)

■住所:〒389-0111 長野県北佐久郡軽井沢町長倉2581
■TEL:0267-31-5582
■営業時間:11:30-18:00(カレーはなくなり次第終了)
不定休/お問い合わせください
*夜は不定期でナッジとしてBar営業あり。
■アクセス:JR中軽井沢駅 徒歩約12分

【Instagram】
eyecurry
https://www.instagram.com/eyecurry.kz/
Nudge(ナッジ)
https://www.instagram.com/nudge.kz/
【HP】
https://nudge-kz.com

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